Chrome OS Flex で Linux 開発環境を利用できるのか

先日、Google から Chrome OS Flex が発表され、これまで Neverware から提供されていた CloudReady が名前を変えて正式に Google Chrome の仲間になることが発表されました。現在は開発版の Dev チャネルのみで公開されていて、早ければ 3 月末予定の Chrome OS 100 に、あるいはその先のいくつかのバージョンのうちに安定版がリリースされるでしょう。

CloudReady はとても便利で、一時期はメインマシンとして利用していたこともありました。しかし Chrome OS よりもバージョンの更新が遅れるためセキュリティの不安があったり、Chromebook と比べると、アシスタント、ファミリーリンク、ニアバイシェア、Smart Lock、インスタントテザリングなどの機能が使えないといった違いがありました。

Chrome OS Flex ではこれらの機能を利用できるようになるようですし、CloudReady と変わらず無料で配布されているうえ、Chrome Enterprise Upgrade や Chrome Education Upgrade の対象にもできるようです。 今のところ Google Play 対応は予定されていないという点は注意が必要ですが、古い端末やタッチパネルがない端末で Android アプリが快適に動かせるかというと難しいでしょうし、Web やクラウドの機能を使うのであれば端末の性能が低くてもできることはたくさんあるので、ハードウェアの出費は抑えつつ、便利な有料ネットサービスを利用するというのもよさそうです。

そういったことを考えて、企業や学校だけではなく、個人でも利用したいという人は多いかもしれません。

条件が揃えば Linux 開発環境は有効にできそう

開発者視点で見ると、Chrome OS Flex でも Linux 開発環境が使えるかということが気になります。

この点について Chrome OS Flex のヘルプに「モデルによる。認定モデルリストで確認できる」といった記述がありますが、リストを見てもそのような説明はないので、実際のところどのモデルで利用できるのかはっきりしません。

少し話がそれますが、認定モデル(Certified models)というのは Google が個別に動作を確認しているコンピュータのモデルです。認定モデルだからといってすべてのハードウェア機能が利用できるとは限らないのですが、ほとんどの機能は利用できるようです。 ただ、一度でも認定されたらずっとそのままというわけでもなく、Chrome OS と同じような期限があるといった記述もあります。 いずれにせよ認定モデルリストにないモデルでも Chrome OS Flex がうまく動くケースは多いと思うので、手元にコンピュータがあるならまずは試してみるのがよいでしょう。

Linux 開発環境の話に戻ると、Chrome OS Flex と CloudReady Education エディションおよび CloudReady Enterprise エディションとの違いの説明の中で、「互換性のあるハードウェアでは、管理者ポリシーで許可されている場合にインストールできる」という説明があります。 おそらくですが、Chrome OS Flex でも Linux 開発環境が利用できると考えてよいのではないでしょうか。

「互換性のあるハードウェア」とは

ただし、「互換性のあるハードウェア」が何を指しているのかあまり明確ではありません。 この点については Google の公式な説明は見つけられていないのですが、CloudReady のブログ記事「Linux (Beta) - support on CloudReady」が参考になりそうです。この記事によると CloudReady で Linux 開発環境を使うには次の条件を満たすことが必要とのことです。

  • デバイスが仮想化機能を備えていること
  • 仮想化機能が BIOS で有効になっていること
  • CPU の脆弱性が放置されていないこと

デバイスの仮想化機能というのは、VT-x や VT-d 相当の機能のことを指すようです。 これらの機能が利用できないほど古い CPU や低スペックの CPU では利用できないということになります。

また、「CPU の脆弱性」というのは、 L1TF という記述が見えるので、CVE-2018-3646 いわゆる Foreshadow のことでしょう。 この脆弱性は 2018 年以前のほぼすべての Intel Core と Xeon が該当するようです。 つまり Intel の CPU を使っている場合は、次のいずれかの条件を満たした場合のみ Linux 開発環境が有効にできるということになりそうです。

  • 第 9 世代 Coffee Lake Refresh アーキテクチャ以降の CPU を利用している
  • 第 8 世代 Coffee Lake までのアーキテクチャの場合、メーカから提供されている修正パッチを適用している

この説明は CloudReady のものですが、Chrome OS Flex でも同じである可能性は高そうです。

まとめ

Chrome OS Flex で Linux 開発環境を有効にできるかどうか、有効にできるとしたらその条件は何か、について考察してみました。 この記事はかなりの部分が憶測なので、間違っている可能性はあります。もし誤りを見つけたら Twitter の方にコメントください。

Chrome OS Flex が登場したことによって古いマシンの活用の幅が広がるのですが、セキュリティを考えるとやはり新しい PC の方が楽だと感じます。このあたりは悩ましいところです。

自動更新が有効な Chromebook の場合は BIOS や CPU マイクロコード、セキュリティプロセッサなど、システムの低レイヤに関するパッチも自動的に適用されるそうです。こういったパッチは適用に失敗するとシステムが起動しなくなったりストレージの暗号化が解除できなくなるといったことが起こりうるので、そういった部分を気にしたくない人は素直に Chromebook を買うほうがよさそうです。

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